台湾の人車軌道について

1.台湾の概要
台湾の人車は軌間495mm、545mm、610mm、762mmなどの線路上を台車と呼ばれる車両を人間が押すことを動力とした軽便鉄道です.最初の人車は1870年代に敷設されましたが、のち日本統治時代(1895年~1945年)の中期、大正時代の終わりから昭和初期にかけて本格的に発達しました.当時の台湾の交通図には軽便線、手押軽便線、手押軌道として表示されています.また、一般的には手押台車とも呼ばれました.比較的低資金で敷設できるため個人経営または株式会社組織により設立され、最盛期には50以上の路線が総延長1,292キロメートル(昭和8年)にも達し、地域の旅客輸送、炭坑専用線、工場専用線、製糖工場、製塩所、バナナ、製茶等の農産物運搬用として使用されました.
人車の路線は道路が発達すると廃止され、また新たな路線がつくられるなど、簡易なために廃止・新設が多く、その概要は正確に把握できません.戦後日本統治から離れてからは、だんだん減少し、炭坑などの専用線と結合した路線以外はほとんど廃止されていきました.それでも離島や炭坑などの用途の路線は残りましたが、炭坑の閉山とともに消え、現在では観光向けの烏来の人車以外すべて廃止されました.なお、烏来の人車は現在エンジンを装備しており、手押しではありません.

おもな人車の区間およびキロ程
区間キロ程備考
瑞穂-瑞穂温泉 約4.0km 瑞穂は花蓮県瑞穂郷
羅東-小南澳 9.8km 小南澳は現在の宜蘭県冬山郷
柑子瀬-金瓜石 6.0km 柑子瀬は現在の台北県瑞芳鎮
十三股-大坡 7.7km 十三股は現在の宜蘭県壮囲郷、大坡は宜蘭県礁渓郷
基隆-三瓜子 13.2km 三瓜子は現在の台北県瑞芳鎮
八斗子-野柳 2.3km 八斗子は現在の基隆市、野柳は台北県萬里鎮
大正町-大武崙 4.4km 大正町と大武崙は現在の基隆市
松山-三張利 2.2km 三張利は現在の台北市
板橋-東園 5.4km  
頂埔-緑町 14.9km 頂埔は現在の台北県土城郷、緑町は現在の板橋市
鶯歌-竹崙 13.1km 竹崙は現在の台北県三峡鎮
桃園-大渓 14.4km  
大渓-角板山 22.7km 角板山は現在の桃園県復興郷
中歴駅前-下大堀 11.8km 下大堀は桃園県観音郷大堀村
新竹-内湾 26.8km 1951年に内湾線が全通すると廃止
竹東-十八児 16.0km 十八児は新竹県五峰郷
関西-馬武督 9.4km 関西および馬武督は現在の新竹県関西郷
弓林-竹東 4.7km 弓林は新竹県弓林郷
竹南-南庄 26.6km 南庄は苗栗県南庄郷
苗栗-錦水 12.0km 錦水は苗栗県造橋郷
苗栗-公司寮 9.5km 公司寮は現在の苗栗県後龍鎮
苑裡-山脚 4.8km 苑裡、山脚とも苗栗県苑裡鎮
錦水-造橋 7.5km 錦水、造橋とも苗栗県造橋郷
土牛-水底寮 8.0km 土牛は台中県石岡郷土牛、水底寮は台中県新社郷
土牛-横流渓 22.3km  
東勢-中坑坪 6.8km 東勢は台中県東勢鎮
北溝-青桐林 4.3km 北溝、青桐林は現在の台中県霧峰郷 
南投-内城 14.2km 南投龍眼林間軌道、戦後は台糖経営で台車龍眼林線、現在の南投県
中寮-集集 9.1km  
員林-石頭公 7.2km 石頭公は現在の彰化県社頭郷
社光寮-東埔納渓 9.0km  
東埔-水裡坑 39.8km 東埔は現在の南投県信義郷、水裡坑は南投県水里郷
埔里-外車呈 33.0km 戦後は台糖埔里工場の外車呈線
林内-社寮 17.9km 林内は雲林県林内郷、社寮は南投県竹山鎮
番社-下南勢 15.0km 番社および下南勢は現在の南投県東山郷
善化駅-善化 1.0km  
善化-大内 3.5km 大内は台南県大内郷
路竹駅-塩田 7.4km 塩田は高雄県永安郷
岡山-燕巣 8.2km  
岡山-赤坎 8.3km 赤坎は高雄県梓官郷
新化街-台南 約9.0km  
※陸地測量部または台湾総督府の測量による五万分の一地図、および楊鵬飛氏著 台湾区鉄道古今站名詞典(ISBN957-97364-6-4)を参考にさせていただきました.

2.友蚋炭坑の人車について
友蚋炭坑の人車軌道は、一般的な旅客営業を行う人車ではなく、友蚋坑から出炭する石炭を運搬する専用鉄道で495mm軌間でした.専用鉄道に分類されるため、上記の表中には現れません.また基隆地区は軍事機密で戦前の地図はその部分が白紙になっているため、かつての状況を調べることが出来ませんでした.しかし炭坑があったために1970年代まで使用されました.石炭の貨車だけでなく旅客やその他の荷物も運搬する人車としては、おそらく最後まで残ったものと思われます.隣接する蒸気機関車牽引の基隆炭坑鉄道は1977年に廃止されましたので、この人車も同時期に廃止になったと思われますが、明確には分かりません.
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