
デンマーク駅撮り
デンマークに行ったとき、駅や車輌の見学かたがたコペンハーゲン中央駅や附近の駅に行ってみました。どんな車輌が走っているか全然知らなかったので、単に駅で撮影、つまり駅撮りしただけですが、こんな車輌が走っていました。ついでにスウェーデンのマルメーにもちょっと行ってみました。(撮影:2012年および2019年)
コペンハーゲン中央駅




コペンハーゲンの中心に位置する中央駅(Københavns Hovedbanegård)は、最初に1847年に建設されました。現在の駅舎は鉄道路線の拡張に伴い、1911年に現在地へ移転して建てられたもので、7つのプラットホームと13本の線路を備えています。駅の線路は、首都圏近郊を結ぶ「Sトレイン」と呼ばれる独立した都市鉄道路線と、デンマーク各地を結ぶ中長距離列車、さらにスウェーデンやドイツへ向かう国際列車の運転系統に分かれています。また、地下鉄も乗り入れています。改札口は設置されておらず、自由にホームに出入りできる構造となっています。駅への出入口は大きな伽藍風の駅舎正面と、ホーム先端に架かる跨線橋の2か所に設けられています。構内にはセブン-イレブンやマクドナルドをはじめ、多くの飲食店や物販店があります。
Sトレイン(S-Tog)




Sトレイン(S-Tog)は、コペンハーゲン市内とその郊外を結ぶ電車系統で、全7路線・総延長約170kmを持ち、5〜20分間隔で運行されています。軌間は標準軌の1,435mm、電化方式は架空電車線式の直流1,650Vです。最初の路線は1934年に開業し、その後徐々に路線網が拡大していきました。現在の車両は1996年から導入が始まった第五世代で、シーメンスおよびボンバルディア(旧ABBスカンディア)製のSA形・SE形が使用されています。日本と異なるのは、車両への落書きに対する対応です。デンマークの国柄なのか、あるいは運行に支障がないからか、落書きされた車両もそのまま運行されています。そうした車両には「落書きは認識しています。なるべく早く修復します」といった趣旨の表示が掲示されています。
ME形 ディーゼル機関車


コペンハーゲン中央駅では、客車列車を牽引するディーゼル機関車、電車、気動車などを目にすることができます。ディーゼル機関車は、1981年から1985年にかけて導入された DSB ME形です。スイスのBBC、ドイツのThyssen Henschel、スウェーデンのNOHAB、デンマークのScandiaが協力して37両製造されました。アメリカGM-EMD社製の 16-645E3B形ディーゼルエンジンを搭載した、電気式ディーゼル機関車です。旅客列車や貨物列車の牽引に使用されましたが、排ガスによる環境負荷や老朽化のため、2021年にデンマークでの運用を終え、新しい電気機関車 EB形(シーメンス製Vectron) に置き換えられています。退役車の一部は海外に売却され、ポーランドやハンガリーで再利用されています。
ドイツからの国際寝台列車


バーゼル~フランクフルト~ハンブルグ、アムステルダム~デュッセルドルフ、プラハ~ドレスデン~ベルリン~ハンブルクから夜行寝台列車がコペンハーベンまで運行されていました。ドイツ国鉄(DB)の車輌と、青い車体に黄色のドアをもつチェコ国鉄(ČD – České dráhy)が保有する 寝台・クシェット車 です。クシェットとは簡易寝台(couchette)で昼間は座席として使用し、夜になると背もたれや補助板を展開してベッド状の寝台にします。これらの夜行列車は2014年に廃止されて、ÖBB Nightjet(オーストリア連邦鉄道)などの新しい夜行ルート再開計画が検討されています。
2階建て客車


2002年にボンバルディア・トランスポーテーション(2021年以降はアルストムに事業継承)が製造した2階建て客車です。導入当初はディーゼル機関車牽引で運用されていましたが、現在は電気機関車牽引へ移行し、現在は主にシェラン島(Sjælland)の地域輸送で使用されています。社章は従来の翼付き車輪から、2014年導入の赤い六角形に「DSB」文字を配した新ロゴへ順次更新されています。
スエーデン国鉄 X2000形 電車


スウェーデン国鉄(SJ)のX2000形(形式X2、通称SJ2000)は、ASEA/ABB(ASEAとBrown, Boveri & Cieの経営統合)による動力車・電装と、Kalmar Verkstad(カールマル)製の客車で構成される自然振り子式の特急電車です、1989年~1998年に製造されました。電気機関車型の動力車+中間客車+制御客車によるプッシュプル編成で、営業最高速度は約200~210km/hで、かつてはスウェーデンからコペンハーゲンまで直通運転していましたが、2025年現在は大規模更新に伴う稼働編成の不足により、大幅に減便されており、デンマークへの直通運転は限定的です。
ドイツ鉄道 ICE-TD形 気動車


ハンブルク~コペンハーゲン間で運行していた、ドイツ鉄道(DB)のICE-TD(クラス605)形振り子式ディーゼル特急です。車両はDB保有ですが、デンマーク側ではDSBの地上設備・案内のもとで発着していたため、車体にDBとDSBの両ロゴが掲出されていました。2017年に営業運転を終了して退役し、その後は新しい車両に置き換えられています。
IR4形 交流電車

デンマーク国鉄(DSB)のIR4形(ER)は、1993~1997年にABBスカンディア(ランダース)で製造した最高時速180kmの4両固定の交流25kV、50Hzの電車です。IC3の意匠を受け継ぐ丸い先頭部は連結時に開いて貫通路となる「ゴムの鼻(Gumminæsen)」を持っています。軽快な走りで、コペンハーゲンと各都市を結ぶインターシティの運行を担っている車輌ですが、今後はアルストム製のIC5導入に合わせて、段階的に置き換えが進む見通しです。(撮影:Østerport(オスターポー)駅)
ET(X31K)形 電車


デンマークではET形、スウェーデンではX31K形と呼ばれ同じ電車が2ヶ国に在籍しています。2002年のデンマーク~スウェーデン間のエーレスンド大橋の開通にあわせて登場した3両固定編成の電車で、交流電力方式の異なるデンマークの25kV 50Hzとスウェーデンの15kV 16.7Hzの双方に対応しています。コペンハーゲン空港—マルメ—ルンド—ヘルシンボリ方面の直通「Øresundståg(スウェーデン語)、Øresundstog(デンマーク語)」を中心に運用され、IC3やIR4と同様の「ゴムの鼻(Gumminæsen)」貫通前頭を持って、容易に増結も可能です。この車輌は最高速度は180km/h、都市間から近郊まで機動性と快適性を兼ね備えた国境連絡電車です。(右はコペンハーゲン国際空港駅で撮影)
IC3形 特急用気動車

デンマーク国鉄(DSB)のIC3形(MF)は、1989~1998年にABBスカンディアで製作された3両固定の特急用気動車で、最高時速180kmに達します。丸みを帯びた先頭部は連結時に開いて貫通路となり、その独特の姿から「ゴムの鼻(Gumminæsen)」の愛称で親しまれています。軽量なアルミ車体と静かな走行が持ち味で、コペンハーゲンを起点とするインターシティ網の主役として運用されています。しかし2030年頃までにアルストム製電車(IC5/Coradia Stream)へ順次更新予定で、IC3は段階的に役割を縮小していく見込みです。(Østerport(オスターポー)駅)
IC4形 特急用気動車

イタリアの AnsaldoBreda(ピストイア工場、のちの Hitachi Rail Italy)製による4両固定編成のディーゼル特急用DMUです。インターシティ置き換え用として2000年代初頭に発注されましたが、ソフトウェア、多重連制御、ドア、空調、保安装置などに不具合が重なって信頼性が低迷し、当初は試運転や限定運用が長期化し、量産投入は大幅に遅延しました。こうした長期の遅延と不具合により「問題児」として知られるようになり、その後の運用は大幅に縮小・置換が進み、IC4の役割はほぼ終盤に近づいています。
コペンハーゲン地下鉄 M1/M2系電車


コペンハーゲン地下鉄 M1/M2系電車は2002年に登場したアンサルドブレーダ(AnsaldoBreda S.p.A., 現日立レール)製造の第三軌条DC750V、3両固定の全自動・無人運転の電車で、最新式のCBTC移動閉塞で運行されています。2002年に最初のM1、M2線が開通し、2025年現在4路線(M1~M4)、路線総延長は約43km、駅数は44となっています。(撮影:M2線、Øresund(ウーアスン)~Amager Strand(アマー・ストランド)間)
おまけ マルメー(スウェーデン)X61形




スウェーデンのマルメー(Malmö)はデンマークからエーレスンド海峡を挟んで地下トンネルの鉄道と道路橋で結ばれており、25分ほどと近いので行ってみました。この駅は地下4線、地上6線を持つ大きな駅です。この電車はX61形(Alstom Coradia Nordic) で、スウェーデン・スコーネ県の地域電車「Pågatågen」用4両固定の架線給電交流15kV 16.7Hz、最高160km/h。2009年以降に導入され、マルメ—ルンド—ヘルシングボリなどスコーネ県内の近郊・地域輸送に使われます。デンマークとは電気方式が異なるため乗り入れはできません。(撮影:マルメー(Malmö)中央駅)