
苗栗火車頭園区
苗栗にはかつて、山岳区間の入口として補助機関車を擁する苗栗機関区がありました。1999年には、その跡地に機関車を展示する施設が開館しました。そして2025年4月、従来の「苗栗鉄道文物展示館」を発展的に改装し、「苗栗火車頭園区」として新たに開業しました。敷地も拡張され、保存車両の充実や、子どもたちにも鉄道への理解を深めてもらう展示が加えられました。さらに、おみやげ店や飲食施設も整備されました。ただし、展示が終了してしまったものも一部あります。ここでは、リニューアルされた火車頭園区の様子をご紹介します(写真はすべて2025年5月撮影)。
苗栗駅と火車頭園区入口

苗栗駅の西口を出てすぐの場所に、火車頭園区の入口があります。入場は有料で、大人100元・子ども50元です。開館時間は9:00〜17:30で、年中無休です。ただし、屋外展示エリアは無料で見学できます。
館内のレストラン・売店

莒光号を模した石鍋屋がひときわ目を引きますが、そのほかにもパン屋やレストランなど、さまざまな飲食店があります。入場時には50元分のクーポンが配布され、これらの店舗で利用できます。また、一時的に園外へ出ることも可能なため、苗栗駅で台鉄弁当を購入して戻る来園者も見られました。
転車台ホールのCT158

転車台ホールではCT152が展示されています。床が平坦で転車台には見えにくい構造ですが、1日4回、車両が回転し、その様子を2階からも見下ろすことができます。CT150形は日本の8620形と同型の機関車で、大正7年(1918年)に汽車製造株式会社で製造(製造番号:358)され、当時の台湾総督府鉄道に配備されました。初期の形式は500形、のちにC95形へ改称、戦後はCT150形となりました。台湾では最多の43両が使用された蒸気機関車です。
列車展示館

列車展示館は、転車台ホールの2階から接続されています。保存車両を上から見学できるだけでなく、模型、腕木式信号機、転轍器、タブレット閉塞機など、鉄道に関する多様な展示があります。子ども向けのQ&Aコーナーも設けられていました。
DT561形蒸気機関車

DT560形は日本の9600形を原形とした台湾鉄路局独自の形式の機関車でアメリカのアルコ社スケネクタディ工場で大正8年(1919年)~大正9年(1920年)に14両製造されました。9600形の基本設計の機関車がアメリカで製造された珍しい例です。現在この1輌だけが保存されています。
R6電気式ディーゼル機関車

R0形は台湾鉄路管理局最初のディーゼル機関車で、1959年に日立製作所水戸工場で11両製造されました.R6はその6号機で製造番号:192421-6です。当時日本の国鉄では完成直後の1号機(のち台湾鉄路管理局R1号)を日立から借り受け、形式DF91形として1ヶ月間各種試験を行いました.ドイツのマン社が設計したエンジンを搭載していますが、不調で故障が頻発したため内6両が1971年に台北機廠においてアメリカGM社のエンジンに装換されました.しかしその後もあまり活躍せず、1999年までに全部廃車になりました。
S305電気式ディーゼル機関車

S300形は入換や支線列車用に導入された電気式ディーゼル機関車で、昭和40年(1965年)にアメリカGM社により21両製造されました。支線用のため最高速度は75km/hで、総括制御装置も搭載されていません。小型で経済的な一方、性能に限界があり、平成8年(1996年)~平成9年(1997年)にかけて順次廃車されました。
木造客車25TPK2053

オープンデッキの25TPK2053三等客車は戦前の台北鉄道工場で大正10年(1921年)製造され、当初はホハ2070形2076号となりました。戦後TP2076と改名され、昭和40年(1965年)さらにTPK2053に変更されました。さらにES2053に改造され事業用となりましたが、平成8年(1996年)に元の姿に復元しました。
EMU100形50EP108電車

EMU100形は、台湾で初めて導入された電車であり、1979年(昭和54年)の西部幹線全線電化に合わせて、イギリスのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GEC:General Electric Company)社で13編成65両が製造されました。自強号として活躍し、台北~高雄間を4時間10分で走破する記録を残しました。2009年(平成21年)6月に最後の運用を終え、引退しました。優美な姿から「英国の貴婦人」と呼ばれています。
E300形電気機関車

E300形は昭和53年(1978年)にアメリカのゼネラルエレクトリックで39輌製造された機関車です。E200形、E300形、E400形はほぼ外形は同じですが、製造時期と設備が異なっており、E300形は基本的に交流電動機がなく、客車に冷房の電源を供給することができず、この機関車を使用する場合、電源車を連結する必要がありました。
65t蒸気クレーン車・平台貨車・炭水車


脱線事故の際出動して事故車輌をクレーンで吊り上げて復旧するための車輌で、昭和25年(1950年)に日立で製造されました。前方に部品を搭載した平台貨車(国鉄のコ形貨車と同じ)に部品を置き、重油を燃料とした蒸気機関で稼働するクレーン部分と炭水車部の3輌で1ユニットを構成します。自重は90tで65tまで吊り上げることが可能です。また時速5kmで自走することができます。
E100形電気機関車

台湾鉄路管理局が最初に導入した電気機関車で、昭和51年(1976年)に南アフリカのユニオン・キャリッジ・アンド・ワゴン社(Union Carriage & Wagon)が製造し、イギリスのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GEC:General Electric Company)から20輌輸入した機関車です。客車に冷房の電源を供給する交流発電機が搭載されていないため、おもに貨物列車と非冷房の客車列車の牽引で使用されました。平成19年(2007年)までに全機使用停止され、このE101のみが保存されています。
台東線ディーゼルトレーラー客車LTPB1813

屋外展示部分は無料で見学できるエリアです。この車輌は昭和45年(1970年)に東急車輌で製造された、ナロー時代の台東線で光華号特急ディーゼル気動車に連結する無動力のトレーラー車(国鉄のキサハに相当)です。台東線の改軌があった昭和57年(1982年)に使用停止した後は、昭和60年(1985年)9月に澎湖島の県立文化センターで展示されましたが、腐食が激しくなり平成11年(1999年)10月に台北機廠で修理後、ここで展示されました。
LDH100液体式ディーゼル機関車

台東線では狭軌用のLDH200形が昭和43年(1968年)に導入されディーゼル化を推進していました。しかし当時製糖業が盛んでディーゼル機関車の需要が高い時期でしたので、花蓮機廠では、所有するエンジンと台車を使って自ら設計し、昭和45年(1970年)にLDH101を製造しました。台東線の改軌があった昭和57年(1982年)からは、さらに高性能の機関車の入線が可能となり廃車となりました。
EMU1200形電車

1980年代になると台湾経済も高成長をとげ、特急自強号の需要が高まりましたが、恒常的な輸送量不足でした。そこで新しい自強号用電車を購入することになり、南アフリカのユニオン・キャリッジ・アンド・ワゴン社(Union Carriage & Wagon)に11編成33輌を発注し昭和62年(1987年)から運用を開始しました。当初はEMU200形でしたが、平成13年(2001年)改造を開始し、塗装も白とワインレッドで、前面はシマウマのような縞模様を配置し「赤いシマウマ」と呼ばれました。令和4年(2022年)に全車廃車になりました。