雲南鉄路博物館
雲南鉄路博物館は、1990年に「雲南窄軌鉄道歴史陳列館」として創設されました。2003年に昆明北駅へ移り、2004年12月28日から一般公開されています。その後、都市軌道交通工事の影響による再整備を経て、2014年に新館として再開館し、狭軌鉄道に限らず成昆鉄道(成都—昆明)などの展示も加えて現在に至ります。雲南省は、中国の鉄道でも複数の軌間が併存した地域で、ベトナムへ通じる1,000mm軌間(メーターゲージ、米軌)の昆河線(昆明—河口)とその支線である600mm軌間(寸軌)の鶏箇線、さらに1,435mm標準軌(准軌)の成昆鉄道があり、近年は高速鉄道網にも組み込まれています。600mm軌間(寸軌)の路線は1990年末に運行を終了しました。また、昆明北駅周辺の米軌(昆明北—王家営/石咀)市内区間は2017年12月から地下鉄建設のため休止されたままですが、米軌は開遠—河口(山腰)間などで国際連運を含む貨物輸送が継続しており、路線として機能する区間も残っています。
- 正式名称:雲南鉄路博物館
- 電話:0871-66138610
- 所在地:雲南省昆明市盤龍区北京路913 Google MAP
- 交通:昆明地下鉄2号、4号、5号線、火車北站前
- 開館時間:9:00~17:00(月・火休館)
- 入場無料、入場は無料です。参観は予約制で、予約は原則として支付宝(アリペイ)の「雲南鉄路博物館」ミニプログラムから行い、QRコードを取得して入館します。私が訪問した2025年12月は、予約手続きの途中で中国の携帯電話番号によるSMS認証が求められ、番号を持っていないため事前予約ができませんでした。そのため当日は博物館入口に掲示されたQRコードを支付宝ミニプログラムで読み込んで当日分の入館QRコードを取得し、入口の読み取り機にかざして入館しました(混雑時は当日入館できない可能性があります)。
雲南鉄路博物館
博物館の入口は、フランス風に改築された昆明北駅です。博物館は3階建てで南館と北館があり線路をまたぐ通路で連結されています。展示エリアは滇越鉄路(昆河線)や箇碧石鉄路(鶏箇線その他の600mm軌間だった路線)、さらに成昆鉄路や高速鉄道に分かれていて、歴史資料や現物資料を見る事が出来ます。
ミャンマー鉄道から贈呈された英国製機関車
ST形774号(754号の誤りとの説あり)はミャンマー連邦鉄道で使用された米軌(1,000mm)の英国ロバートスティーブンソン製造の機関車で、戦時により破壊され不足した機関車を補うために28輌輸入されたものうちの1輌です。1948年~2006年までミャンマーで使用されました。廃車後中国鉄道部に贈呈され雲南鉄路博物館と北京鉄道博物館に保存展示されています。中国の国鉄の形式ではSTは軸配置1-E-1の機関車を表しているので、運転台下のSTの文字はミャンマーでの形式です。
KD55形(9600形)蒸気機関車

KD55-583は、戦時中に国鉄から日本軍へ供出され、准軌(標準軌、1,435mm)に改軌のうえで華中鉄道および華北交通で使用された、元・国鉄9600形の1輌です。戦後はKD5形に改称され、さらに米軌(1,000mm)へ再改軌されてKD55形となり、雲南昆河線で使用されました。ただし、現地の説明には「1897年川崎製造」とありますが、9600形の初号機は1913年製造であるため、1897年という製造年は明らかに整合しません。また製造者についても「川崎」と断定されていますが、軍事供出された同系の機関車には小倉工場製や汽車製造会社製のものもあり、当該機が他社製である可能性も否定できません。雲南では1958年から1985年まで使用され、現在は国家三級文物に指定されています。
SN形蒸気機関車
SN形29号は、雲南の支線・鶏街—箇旧間(鶏箇線)で用いられた、600mm軌間の蒸気機関車です。600mmという極めて狭い軌間は、中国では「寸軌」と呼ばれ、鶏箇線はその代表的な路線でした。その前身には、中国最初の民営鉄道である箇碧石鉄路で、のちに国鉄に組み込まれました。本形式はアメリカのボールドウィン社で製造されたテンダー機で、同形機は17~32号の番号です。製造年は資料により幅がありますが、概ね1920年代(1924~1929年頃)にかけて納入されました。寸軌用でありながら車体は大形で、全長は約15m、狭軌蒸気機関車として特異な存在感を放ち、鶏箇線が廃止される1990年末まで使用されました。現在、SN形は、北京(中国鉄道博物館23号)、上海(上海鉄路博物館26号)、昆明(雲南鉄路博物館29号)に保存されています。さらに碧色寨の滇越鉄道歷史公園にも27号と21号が展示されていますが、フレーム部分は明らかに別に作成されたもので、確実に実車とは言い切れません。
上游形蒸気機関車
上游形0388号は1971年唐山機車車輌製造廠で製造された准軌(1,435mm)用の機関車です。説明板によれば南磷化集団有限公司の昆明市晋寧県昆陽鎮三家村にある昆陽磷鉱の露天掘りリン鉱山で2006年まで使用され、その後雲南鉄路博物館に贈呈され展示されたとあります。
東方紅21形ディーゼル機関車
東方紅21形は軌間米軌(1,000mm)の液体式ディーゼル機関車で、その1号機です。青島四方(四方機車車輛廠)1978年製造され、蒸気機関車に変わって雲南で客貨、入換用として使用されました。
東風2形(DF2)ディーゼル機関車
東風2形(DF2)3279号は、1969年に戚墅堰機車車輌廠で製造された准軌(1,435mm)用の電気式ディーゼル機関車です。東風2形は東風形を改良して搭載機関を6L207E形(1800馬力)の変更した入換用の機関車です。
東風1形ディーゼル機関車とSN形蒸気機関車
東風1形(DF1)は、中国が国産化を進めた准軌(1,435mm)の電気式ディーゼル機関車で、1964年から1974年まで製造されました。このDF1形2058号は、戚墅堰機車車輌廠で1973年製造された車両です。SN形蒸気機関車と並べて見ると、軌間の違いによる車体規模の差がよく分かります。
ミシュラン号気動車
フランスのドゴービルで1914年に製造された米軌(1,000mm)用の気動車で、1914年から1984年まで昆河線(滇越鉄道)で使用されました。1932年にはフランスのミシュラン社で車輪の踏面をゴム製に変更し、以後「線路上のミシュラン号」と呼ばれました。厨房とシャワー室を備えた本体とトレーラーの荷物車で構成され、最高速度100km/hで貴賓車として使用されました。廃車後2004年に修復され、現在は国家一級文物に指定されています。
春城号電車
春城号は、中国の高速動車組(EMU)開発の初期段階を代表する試作・実用車で6両編成(3M3T)で構成される交流25kVの准軌(1,435mm)用の電車です。雲南鉄路博物館では「春城号電力動車組」のうち RZ25DT 110875(先頭車) と YZ25DD 345767(中間車) が保存展示されています。
客車・貨車

緑色の木造三等客車372号は米軌(1,000mm)用の木造客車は1940年代にフランスで製造されたもので、昆河線で1985年まで使用され、現在は国家二級文物に指定されています。朱色の木造三等客車241号は600mm軌間の鶏箇線用で1919年の漢口揚子江工場製造で現在国家一級文物に指定されています。朱色の荷物・郵便車351号は寸軌(600mm)用で1919年の漢口揚子江工場の製造です。右の平台貨車701号は1919年の漢口揚子江工場の製造で現在国家一級文物に指定されています。他にも有蓋車、無蓋車が保存されています。