蒸気機関車時代の苗栗機関区

通過する列車から撮影したDT560形、いわゆるALCO(アメリカンロコモティブカンパニー)製造の9600形です。乗車した列車は対号特快という、列車名のない単に指定席列車というものでした。列車は速度を緩めませんでしたので、ぶれています。

日本には類似の仕様の機関車はありますが、まったく同じ形式はないCK100形です。1917年～1919年に汽車会社で8輌製造され、1974年まで使用されました。1998年に台湾鉄路管理局最初の動態保存機として復活しましたが、現在は静態保存に戻り彰化機関区で保存されています。

CT254は日本時代のC554で1935年の三菱製です。右側の給水塔には「精誠団結」と書かれています。「団結してまごころをつくす」という意味で、軍隊や組織によくあった標語だそうです。

CT276は日本時代のC576で、1943年の川崎車輌の製造です。6までが戦前に製造されたもので台湾総督府交通局の形式C57形でした。CT277以降は戦後に製造して台湾に送られたため、初めからCT270形となりました。なお最終番号のCT284は1953年の製造で、最後に製造された国鉄形蒸気機関車です。

DT671は日本時代のD5121で1942年の汽車会社の製造です。台湾でも日本と同じD51形で、戦後DT650形に改称されました。手前はすべて石炭で、きれいに整えられています。

うしろにある建物は、現在でもかわらず、苗栗火車頭園の文物故事館として使用されています。

台湾では西部幹線の電化工事から1977年から開始されています。DT671にも日本の機関車で表示されている「架線注意」のような注意表示「危険 電車線有高圧電」がデフレクターに掲示されています。ここ苗栗も1987年10月電化され、さらに急勾配が存在した山線区間も1998年新線に切り替えられました。

石炭を置く場所は、たま石を埋め込んだ塀のような構造で、長さもあり線路から見ると何重にもなっているようで見事でした。

苗栗火車頭園の文物故事館のとなりの平屋の建物も現在残されています。2000年に訪問したときに、この平屋の建物内で職員の方から弁当が余っているから食べて行けと、ごちそうになったのも懐かしい思い出です。

手回しの転車台です、苗栗機関区の南の端にありました。現在でも苗栗火車園区の同じ場所にあります。この転車台で機廻りする機関車は見たことがありませんが、韓国の慶州で140tのミカサ形を2人で廻すのを見ました、従って台湾のC55、C57も110tあまりなので案外簡単に転換できるのではと考えます。

補機として出場するCT256です。CT256はC55形と同形で日本時代の形式名もC55です。1938年に三菱で製造されました。三菱製のC55は日本では2輌しかありませんが、台湾同形9輌は総て三菱製です。

この列車はディーゼル機関車の牽引でしたが、後部補機としてCT256が連結されました。縱貫線は竹南から彰化の区間が山線と海線と分かれていて、山線は台中を経由するため当時も今も特急列車の多くは山線経由で運転されます。補機は苗栗と台中の間で運用されましたが、1978年10月に電化が完成したため廃止されました。