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1996年と2012年の北ボルネオ サバ州鉄道

現在のサバ州鉄道は、イギリスの北ボルネオ会社(British North Borneo Company, BNBC)によって建設された、軌間1,000mmの鉄道です。北ボルネオ会社は1881年に創立され、単なる企業ではなく、北ボルネオの統治を目的とした軍や警察などの行政機構も備えていました。植民地経営の一環として、ゴム、タバコ、コプラ、木材などの大規模農園を開発し、それに伴い港湾や鉄道も整備されました。 これらの資源を輸送するための鉄道は、1896年にボーフォート(Beaufort)〜ウェストン(Weston)間(32km)が最初に開通し、最終的にはコタキナバル(Kota Kinabalu、旧ジェッセルトン)〜テノム(Tenom)、およびテノム〜ムララップ(Melalap)間を含む全長193kmの路線網が整備されました。 1914年には鉄道部門を管理する北ボルネオ鉄道局(North Borneo Railway Administration)が設立され、これが現在のマレーシア・サバ州鉄道の前身となりました。 第二次世界大戦中には日本軍に占領されましたが、戦後はイギリスによって修復が進められ、インフラの強化が図られました。 1970年代になると蒸気機関車からディーゼル機関車への切り替えが進みましたが、道路整備の進展により、Weston支線(1963年)、ムララップ〜テノム間(1970年)、コタキナバル〜タンジュン・アル(Tanjung Aru)間(1974年)などが順次廃止され、現在の営業区間はタンジュン・アル〜テノム間の片道134kmとなっています。

Peter Crush氏は1996年にこの鉄道を訪問し、老朽化しつつも古きイギリスの面影を残す姿を記録し写真と紀行文を残しています。
1996年のサバ州鉄道 (By Peter Crush)

2007年から2011年にかけて中国による全線改修が行われ、約4年間の運休を経て、中国製のディーゼル機関車や、駅施設、線路基盤、信号設備などが一新されました。これにより、かつてのイギリス風の鉄道風景は中国風に大きく変貌を遂げました。 また2000年からは観光振興の一環として、蒸気機関車を用いた「北ボルネオ鉄道」の観光列車の運行も開始されました。鉄道インフラはサバ州鉄道が管理していますが、観光列車の企画、チケット販売、車内サービスなどは地元のツアー会社が担当しています。
2012年のサバ州鉄道および「北ボルネオ鉄道」の蒸気機関車による観光列車

コタキナバル市内のサバ州博物館には、かつて使用されていた蒸気機関車が保存展示されています。
サバ州博物館